IVS2015 LAUNCHPAD Spring登壇社のウェルスナビに聞く、マザーズ上場までの道のり。

2021.04.12

昨年12月に東証マザーズへ上場を果たし、現在の時価総額は2000億円(2021年4月12日現在)を記録しているウェルスナビ。その代表取締役である柴山さんに、これまで事業の道のりや今後の展望、そして2015年に出場されたIVS LAUNCHPADについてお話を伺いました。


ウェルスナビ株式会社 代表取締役CEO 柴山和久

「誰もが安心して手軽に利用できる次世代の金融インフラを築きたい」という想いから、プログラミングを一から学び、2015年4月にウェルスナビ株式会社を設立。2016年7月に資産運用ロボアドバイザー「WealthNavi」をリリース。リリースから約4年8カ月となる2021年4月に預かり資産4000億円に達した。起業前には、日英の財務省で合計9年間、予算、税制、金融、国際交渉に参画。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務し、10兆円規模の機関投資家をサポート。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2021」Top 3に選出。著書に『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』(ダイヤモンド社、2018年)

ウェルスナビは「ものづくりする金融機関」

ーまず初めにウェルスナビの創業のきっかけを教えて下さい。

私がウェルスナビを立ち上げたきっかけは日米の金融格差です。

ニューヨークで働いている時にクリスマス休暇で義理の両親に呼ばれて、資産運用の内容を確認する機会がありました。義理の両親は普通のサラリーマン家庭ですが、プライベートバンクという富裕層向けの資産運用サービスを利用しておまかせで資産運用をしてもらっていました。そこで数億円の資産が運用されていて私は衝撃を受けました。

どうして普通の勤労世帯なのに富裕層になれたのかを聞くと、資産が全くなかった若い時から会社の福利厚生で資産運用をしていたことが富裕層の仲間入りをしたきっかけだと言っていました。

その話を聞いた時に私が一番最初に思い出したのは私自身の両親でした。義理の両親と同じような年齢、学歴、職歴で、定年まで働いて数千万円の退職金を受け取っているので、日本全体で見ると恵まれた方であったとは思いますが、アメリカの義理の両親と日本の両親を比べると10倍ぐらいの金融資産の差がありました。

もしも私の両親が同じように若い時から資産運用をお願いすることができていたら10倍とは言わないまでも何倍も豊かだったのではないか、あるいは日本全体がもっと豊かだったのではないかと考え、誰でも安心して利用できる、一種の社会インフラとしての資産運用サービスを日本で立ち上げたいと思ったのが創業のきっかけです。

ーまさにそこから立ち上がったウェルスナビですが、あらためて事業内容を簡単にご紹介いただけますでしょうか?

ウェルスナビはオンラインで完結する自動おまかせの資産運用サービスを提供しています。アプリで5つの質問に答えると、運用プランが示されます。

その際、もしもリーマンショックが今起きたらどれぐらいの資産が減ってしまうのか、その後どれくらいの期間で回復していくのかといった、最悪のケースも示します。また例えば、今30歳の方が30年後に3000万円の資産形成をしたいといった目標に対する道筋も直感的に理解できるようにスマホで表示をしています。

そして運用プランを選択をすると、後は自動的に資産運用が行われていくサービスになっています。

2016年7月のサービス開始から、現在4年半ほど経っていますが、20万人を超える方々にご利用いただいていて、預かり資産は4000億円を超えています。

お客様の90%以上が、20代から50代の働く世代です。また、WealthNaviをご利用中でご満足いただいている方の割合は80%を超え、今後10年以上利用し続けたいとお考えの方々も67%を占めています。

そうした意味で、まさに日本の働く世代の中長期的な資産運用を自動的にサポートしているのがWealthNaviです。

ーここまで順調に成長してきたように見えるウェルスナビですが、これまでハードシングスであったり、経営する上で大変だったことはあったのでしょうか?

今では預かり資産が4000億円を超えていますが、サービスを開始した当初は、お客様からのご入金が1円もないという日が何日も続くこともありました。

そうした中でごく稀にですが、100万円、300万円を預けてくださるお客様がいらっしゃり、当時のWealthNaviには知名度も実績も全くないに等しいにも関わらず、お客様はどうして使ってくださって、そしてWealthNaviはお客様のどんな悩みや課題を解決できているのだろうと考えていました。

そうしたWealthNaviを使ってくださっているお客様のために、より良いサービスをつくっていこうとプロダクトづくりに集中していた時期がサービス開始当初から続いていました。

初期の苦しい時期に、諦めずに続けることができたこと、そして、WealthNaviを使っているお客様のためにより良いサービスをつくり、サービスの改善を続けていくというWealthNaviの基礎を築くことができたのは、今振り返ると良かったと思います。

ーその基礎というのは具体的にどんな経営哲学や意識づけになるのでしょうか?

お客様にご利用いただけるサービスをつくることが重要だと思っています。

最近ですと、スタートアップが数十億円の資金調達をしたというニュースが連日のように流れています。スタートアップというと、大型の資金調達をして広告宣伝費を大きく使ったり、大量採用を行っていくというイメージを持つ方もいると思います。

しかし、私たちウェルスナビに限らず多くのスタートアップはサービスを開始した当初は、本当にチームも小さく、売上もほとんどない状態で、サービスづくりに専念していると思います。

規模が小さいときでも少数ながらサービスを高く評価してくださるお客様がいると思いますので、そうしたお客様をまず見つけ出していく。そして、お客様により本格的にサービスを使っていただくためには、何をしたら良いのかと考えながらサービス開発に専念する。

お客様を中心に考えていくということが、スタートアップ立ち上げのときは非常に重要だと思います。

私たちの場合、ものづくりをする金融機関としての基礎は初期に築かれたと考えています。サービスが大きくなった今でもお客様からの声やフィードバックは、毎朝社内でシェアをしています。金融サービスという規制が厳しい領域で事業を行っていますが、年間20回を超えるペースでアプリの改善を続けています。

お客様を中心にサービスづくりに専念する、それが成り立ってから大型の資金調達や広告宣伝、積極的な採用を行う。こういう順番を間違えないことが大切だと考えています。

フィンテック業界の今後

ー日本のフィンテック業界の動向についてはどうお考えでしょうか?

日本の場合は金融サービスの質が高いので、海外のフィンテックに比べるとフィンテック自体のハードルが高いです。

例えば、海外だとそもそも銀行口座を持っていないという方が多いので、銀行口座がない中でも金融サービスを使えるようにしようとするとそれだけでもフィンテックになります。

日本の場合だと、誰でも銀行口座を所有しているので、今ある質の高い金融サービスにプラスアルファで何かを付け加える必要があるので非常にハードルが高いんです。

ですから、日本の方がフィンテックサービスをつくるのは非常に難しくて、逆に一度その基盤ができると、元々のサービスのクオリティが高いので、伸びていくと思います。

ー柴山さんがこれから盛り上がりそうだと注目しているフィンテックの領域はありますか?

企業向けと個人向けのサービスが、今はバラバラだと思いますが、そこをくっつけていけば伸びていくかと思います。

それはなぜかというと、私達の世代では就職した時に銀行口座を作ることが多く、会社がこの銀行を使っているので同じ銀行で振り込み用の口座を合わせて作ってくださいというのが多いからです。

例えば生命保険でも、昔だと入社すると先輩からこれを買った方が良いと言われたり、あるいは入社するとそこに保険会社の方がいらっしゃって、そこで保険商品をすぐ買えたりしました。

このように仕事をしたり、キャリアが進んでいく中で、仕事と関連して金融サービスを使う人は多いので、仕事と個人向け金融サービスが実はつながっているということがフィンテックやネットの世界でも起きて今後の大きな成長分野になると思います。


IVS2015 LAUNCHPAD Spring 登壇時の柴山さん

LAUNCHPADは参加することに意義がある

ー柴山さんは2015年にLAUNCHPADに出場されていますが、応募のきっかけは何だったのでしょうか?

LAUNCHPADは弊社のエンジェル投資家であり、ウェブ進化論の著者である梅田望夫さんから教えていただきました。当時の私はWealthNaviのプロトタイプをつくったばかりの状況で次は何をしたら良いのか迷っていました。

そのときに、LAUNCHPADに応募してみてはどうかと、アイディアをいただいたのがきっかけで、その後おそらく24時間以内にはLAUNCHPADに応募したんじゃないかなと思います。

ースピーディーな決断だったんですね。そこから予選を通過して本戦に出場されたと思いますが、その予選や本戦で印象に残っていることなどはありますでしょうか?

一番印象に残っているのは、予選でプロダクトのUI/UXを大きく変えたということですね。

私自身が作ったプロトタイプは、PCで動く形になっていて、デザインも入っていない状態でした。当時2015年春でしたので、ちょうどスマホへの移行が一気に進んでいるときでした。「これからの時代はスマホです。」と予選でアドバイスをいただいて。最終予選には、スマホでプレゼンをしたと思います。

そうした意味では、LAUNCHPADに応募してから本選に出るまでの間に大きくUI/UXを変えていくことになったので、最初から完成品があってそれをLAUNCHPADに出すというよりは、LAUNCHPADに参加するプロセスの中でプロダクト自体を改善していたというのが非常に大きかったです。

ーLAUNCHPAD卒業生として今後のLAUNCHPAD登壇者や登壇を目指す起業家の方にも一言メッセージいただけますでしょうか?

LAUNCHPADは参加することに意義があると思います。参加すること自体も非常に大変だと思いますが、例えば私は、結局本戦では入賞できなかったんですね。

ですが、LAUNCHPADに参加するプロセスの中で、なぜWealthNaviというサービスを世の中に広げていきたいのか、なぜ今必要とされているのかということを何度も自分に対して問い直し続け、それを説明することを磨くことができたと思います。

結果的にLAUNCHPADでは入賞することができませんでしたが、そこで一つの旗をたてたことで、チームをつくることができました。また、なぜ今WealthNaviというサービスが日本で必要とされているのかという説明を磨き続けることで、次の年には他のピッチコンテストで優勝をすることができました。

これらの経験は、お客様や投資家といった様々なステークホルダーとのコミュニケーションの中でも非常に応用が利くと思います。

ですのでLAUNCHPADで、優勝するあるいは入賞するといったこともすごく大事だと思いますが、私のように全く賞を取れなくてもその後、事業が立ち上がっていった例もありますので、まずはLAUNCHPADに参加することに意義があると思っています。ぜひ頑張ってください!

ーこれまでのIVSにもお越しいただいているかと思いますが、IVSのコンテンツで印象に残っていることなどはありますでしょうか?

IVSは、日本や海外のスタートアップがどの方向を向いているのか肌感覚で理解することができる貴重な場だと思っています。

そうした感覚が数ヶ月遅れ、半年遅れぐらいで、例えばメディアなどで耳にするテクノロジーの話題として聞こえてくると感じています。

世の中の動きに対してアンテナを張るという観点から、IVSは非常に有用な場だと考えています。

ー最後に今後の展望やビジョンを教えて下さい。

私達は2020年12月に東証マザーズ市場に上場しました。今後さらに事業を成長させ、誰でも安心して利用できる、いわば社会インフラとしての資産運用サービス、金融サービスづくりに邁進していきたいと思っています。

2021年2月にはNISA(少額投資非課税制度)に対応した新機能「おまかせNISA」の提供を開始し、非課税のメリットを生かしながら、WealthNaviでおまかせの資産運用を行うことがきるようになりました。

既にWealthNaviをお使いのお客様や、これから資産運用をしていくお客様をより強力にサポートしていくことで、1人でも多くの働く世代の方々の豊かな老後に向けた資産運用をサポートしていきたいと考えています。

これらの取り組みを通じて、預かり資産1兆円、そして1兆円からその先へと成長していき、「働く世代に豊かさを」という私たちのミッションの実現に向けてこれからも努力していきたいと思っています。

ーありがとうございました!

ーWealthNaviの各種情報はこちらから!

ウェルスナビ株式会社
Wantedly
LAUNCHPADのアーカイブ動画


取材・編集 : 島川敏明 / 西島伊佐武