【株式会社トルビズオン】ドローンを社会実装する!空のシェアリングプラットフォーム「sora:shere(ソラシェア)」

2020.08.28

株式会社トルビズオン

CEO/代表取締役 増本 衛氏

九州大学経済学府産業マネジメント学科(MBA)卒。 大学卒業後、日本テレコム(現ソフトバンク)に営業職として入社。2014年から起業。映像制作からスタートし、2015年にドローンに出会う。以来、ドローン販売代理店(DJI)・ドローンスクール経営・ドローン測量・ドローンプログラミングなど、ドローンビジネスを一通り経験。その経験の中で、ドローン産業の成長を加速するために、上空シェアリングビジネスであるsora:shareのモデルを考案した。九州エリアの産官学連携組織「九州ドローンコンソーシアム」の創立者・代表理事。社会活動としては、ドローン災害調査に力を入れる。2016年度熊本震災、2017年度九州北部豪雨、2018年度西日本豪雨、2019年度佐賀水害、すべての現場でドローンを飛ばした。

 

ドローンの可能性に魅せられて

ー起業のきっかけやバックグラウンドについて教えてください。

大学を卒業して、新卒で大手の通信事業者に入りました。その後、実家の手伝いをしないといけなくなってしまい、家業の経営を手伝うために一旦実家に帰りました。

それ(家業の経営)を30歳過ぎまでやっていたのですが、前職(通信事業者)時代に取り組んでいたインターネットの領域が徐々に盛り上がりを見せてきていて、家業の内容と自分が本当にやりたかったことにギャップがあったこともあり、一念発起をして10年前に個人事業で独立をしました。

そこからしばらくはインターネットやSNSを使ったプロデュースや映像の制作をやっていたのですが、その中で撮影にたまたまドローンを活用する機会がありました。「これはすごい」となり、ドローンの可能性に着目するに至りました。

そこからドローンについていろいろ調べるようになったのですが、その中でも、特に海外での体験が大きいですね。

ドローンビジネスのリサーチも兼ねてアメリカのシリコンバレーに行った際、3Dロボティクス、スカイキャッチ、ジップラインなどの最新のドローンスタートアップを目の当たりにしました。

日本はやっとDJI(中国のドローンメーカー)の趣味用ドローンが入ってきたくらいでしたが、かたやアメリカではドローンを使ったサービスが次々と生まれ、自動制御が当たり前の未来がすぐ先に見えている。これは日本遅れている、やばいという強い危機意識が芽生えたのを覚えています。

ただ、タイムマシン経営じゃないですけど、今後の日本において海外のようにドローンビジネスが活発化することを考えると、逆に5年10年先の未来に必要になるようなプロダクトを先回りして作ることができれば事業として大きくできるとも思いました。

何万台ものドローンが空を飛び交っていることを考えると、今までにない問題が起きることも確実です。

ここで、私たちは、特に「地権者」の問題に着目しました。ドローンを飛ばす側(運行者)と自分の土地の上空にドローンを飛ばされる側(地権者)との間で、何らかのコンフリクトが生まれるのではないか、という仮説です。

というのも、自分が撮影でドローンを飛ばしている最中も、近隣の人々から様々なクレームを受けました。ドローンの音やプロペラの風圧、自分の頭上に落ちてくるかもしれないという恐怖、プライバシーの問題などです

アフリカなどでは問題にならないことも、人口密度が高く、かつ土地の境界にも厳しい日本においては、いくつもの未曾有の問題が想定されます。やはり、日本でドローンを浸透させるには、確実にこの「権利」の問題に対する新しいアプローチが必要になるだろうと考えました。そこで作ったのがソラシェアです。

 

空のシェアリングプラットフォーム「sora:share(ソラシェア)」

ーソラシェアについて教えてください。

「空」を「シェア」でソラシェアです。「空をシェアする」と言われても最初はなかなか理解が難しいと思います。ただ、身近な例を挙げるとすごく分かりやすいです。例えば送電線もドローンと同じく地権者がいる空の上を通っていますが、実は送電線のロープの下に住む地権者には電力会社からお金が支払われている場合があります。

空の権利も、不動産などと等しく所有権として広く認められており、これを空中権と呼びます。

このドローン物流における空中権を事業テーマにしたいと思い、早速シリコンバレーの投資家たちにピッチしに行ったのですが、残念ながら「Moon Shot!」(実現可能性は低いだろう)とあしらわれてしまいました。残念ながら、投資を受けることもできませんでした。

そこで、実現可能性を高めるため、行政の協力を仰ごうと考えました。最初に、内閣官房シェアリングエコノミー推進室というところに相談に向かったところ、職員の方にいろいろと法律関係を調べていただき、このスキームなら法律的には問題がない、というお墨付きを頂くことができました。

その後、政府の大臣クラスの方々の前でピッチを行うイベントにお呼び頂く機会があり、そこでも、問題がないというお返事を頂くことができました。

ー事業モデルについて教えてください。

世界のいくつかの国ではすでに当たり前のようにドローンが飛んでいて、例えば中国では一部無人のドローンが実際に物流の現場で運用されていたりします。

また、コロナ禍において、このドローン活用の傾向は加速しつつあります。例えば医療用の配送システムや、ドローンによる監視員のリプレイス(無人警備)、消毒液噴霧など、用途は多岐に渡ります。

ただ、現在の日本において海外のように自由にドローンを飛ばすことは難しいです。まず、航空法により、ドローンの飛行には厳しい制限がかけられています。しかし、これらは行政の許可・承認があれば認められるため、そこまで大きな障壁ではありません。

非常に厄介なのが民法です。民法207条において、「土地所有者の権利はその上下に及ぶ」と規定されており、ドローンは無許可で他人の土地上空を飛ぶことはできないことになっています。上空300メートル以上は範囲外ですが、ドローンはその高度では飛行不可能です。

よって、地権者の権利を侵害しないためには、膨大な土地所有者から一軒一軒承諾を得る必要があり、これは現実的ではありません。現状のスキームでは、ドローン物流は実現が非常に難しいと言わざるを得ません。

そこで、この問題を解決するべく、土地所有者とドローンユーザーをマッチングすることで、空のシェアリングエコノミーを作るというサービスを思いつきました。

ただ、空域の貸し借りというビジネスモデルが本当にワークするのか、という仮設検証も兼ねて、まずは点としての空のシェアリングプラットフォームである「ソラシェアマーケット」というサービスをローンチしました。

これはホテルの予約サイトのように空域を予約し、プラットフォーム内で地権者の承認を得ることで、実際にそこでドローンを飛ばせるといったサービスです。

最終的には、先ほどお話ししたコンセプトのような、地権者とドローン運行者をマッチングし、配送効率やリスク算定まで加味した最短ルートを提案できるような、空のETCのようなサービスを目指しています。

実際にセイノーHD様や森林組合グループ、電通九州などと業務提携を行いながら現在事業を進めています。自治体の協力も仰ぎながら、様々な地域で横展開を進めていき、長期的には世界に通用する空の総合プラットフォームを作っていきたいです。

 

将来は空のプラットフォームに

ー今後ドローンが社会実装され人々の生活に欠かせないものになった場合、車のように事故の可能性などの問題よりも利便性がはるかに大きくなることが考えられます。その際も、空の使用料金を払わなければならなくなると考えていますか?

そこまでドローンが浸透していくまでは20~30年くらいのかなり長い時間がかかると思っています。

ですが、これだけ変化の速い世界ですので、我々もずっと今のビジネスモデルで行けるとは考えていません。そこで空のプラットフォームを目指そうと、今我々が独自で作っているのが「スカイドメイン」という概念です。

これは、DNS(ドメイン・ネーム・サーバー)というサイバー空間上のドメインシステムを参考にしています。DNSはインターネット空間上でサイトなどの所在地を表すIPアドレス(数字の羅列)に名前をつけるシステムを指します。弊社のHPを例に挙げると、23.126.3.81というIPアドレスを、DNSによってtruebizon.comというドメインに変換しています。

これを空域に当てはめているのがスカイドメインです。緯度・経度・高度の集合で示された空間にIDを付与し、データベースを紐付けています。このデータベースには緯度・経度・高度のほかにも風速や気温、空価なども含まれます。

このスカイドメインの特に大きな特徴として、同じ空域に複数のスカイドメインを割り当てることができるという点が挙げられます。例えば、災害調査用の飛行ルートである「:dis」や、空輸用の飛行ルートである「:log」、農業用の飛行ルートである「:agri」といった具合です。

最終的には、このスカイドメインを世界展開し、空の総合のプラットフォーマーになりたいと考えています。このプラットフォーム上で誰もが自由に開発できる。AndroidでいうところのGooglePlayStore、iOSでいうところのAppStoreのようなイメージです。

ー資金調達についても教えてください。

資金調達については、シードでKipsというVCから調達しています。次がシリーズAかというところで、バリエーションを高めてラウンドに入ろうと頑張っていたのですが、コロナで一気に雲行きが怪しくなってしまいました。コロナ前に決まりかけていた話も、コロナで急に「ちょっと今は」という風になってしまって。

というのも、我々のビジネスモデルは直近で稼げるようなものではなくて、しばらくは(赤字を)掘って掘って、後で大きくグロースさせるといったものなので、VCの数年のファンド期限の中でリターンを出す世界観とはどうしても合わないところがあるんですね。

グロースまでに10年15年、下手したら20年くらいは掛かると思っているので、そこに関してVCの方にシビアに見られることが多いような気がします。なので、最近はエンジェル的な投資家の方のほうがうちの株主としては合っていると考えたりもしています。

ただ、そういった理由もあり、このグロースまで時間がかかるという弱点を補完すべく、足もとでも稼げるビジネスモデルに徐々にシフトさせていっています。

これまでは長いタイムスパンで見た空の開拓のみに注力していましたが、最近はドローン物流のオペレーター育成など、より直近で需要が出そうな分野にも一部シフトしながら多角化を進めているところです。

ー事業会社やCVCからの調達は考えていますか?

先ほどお話しした通り、シードはVC1社(Kips)のみです。ただ、シリーズAについては事業会社から調達する予定でした。

というのも、普段からオープンイノベーションというかたちで様々な事業会社と共同で事業を行なっていますので、当然膨大な数のNDA(秘密保持契約)を結ぶことになります。こうなってくると、協業している事業会社と資本業務提携という形で資本も入れて、もっと密に連携しながら一緒に事業を作っていくのが最良の選択なのかなと思っています。

ただ先ほどもお話ししたコロナの影響で、CVCや事業会社から投資を受けることが難しくなっていることもあり、今のところは一度プレシリーズAという形でVCから調達を入れて、その次のシリーズAで事業会社から入れるというのが一番良いかなと思っています。

ードローン分野に関しての投資家からの反応はどうですか?

反応はかなり良いですよ。先ほどもお話しした通り、ドローンは非接触型輸送手段であるため、コロナ禍で求められているサービスであることは確かです。今後大きな成長が見込めるとも思っています。

ただ、これは個人的な意見にはなりますが、今から機体製造(ハード)の分野でアメリカや中国に勝つのは非常に難しいと思っています。

それもあり、私個人としてはドローンのハードを作るよりは、ドローンの社会実装に向けた環境整備の方に興味があります。ハードではないソフトな部分にはまだ勝機が残っているなと感じています。

ー今後のビジョンや展望について教えてください。

現状の法律では、ドローンの有人地帯での目視外飛行はできません。ドローンを配送業に活用することを考えると、これは致命的です。なぜなら、物流の需要は有人地帯にあるからです。なので、今ドローン物流を始めようとしても、せいぜいPOC(実証実験)が限界で、事業として成り立たせることは不可能です。

しかし、政府が発表しているロードマップ通りに行けば、2022年にこれが改正され、有人地帯での目視外飛行が可能になるとされています。

私たちは、この2年間を与えられた準備期間と捉え、この2年間でいかに協力してくれるパートナーを増やし、ドローン物流解禁後に役立つネットワークを構築できるかに賭けています。

2022年のドローン物流解禁後は、資本力がものをいう勝負になると考えており、調達は比較的に容易になると見込んでいます。なので、この2年はドローンの社会実装や環境整備にフォーカスして、地道に事業を進めていきます。

ー最後にIVSに参加してみた感想や収穫を教えてください。

すごくよかったですね。IVS LaunchPadに応募させて頂いた縁で、推薦起業家枠で参加したのですが、当日は本当に刺激を受けました。若い起業家たちが自分の言葉で語るミッションやビジョンを聞いていると、とても胸がアツくなりましたし、参加している起業家たちのレベルも非常に高いなと。

特に、事業計画が精緻に練られている点などは見習いたいなと思いました。セッションについては、特にタイミーの小川さんなどが登壇していた若手起業家のセッションが印象に残っています。あの年齢であそこまで深く考えられている点は、本当にリスペクトしかないです。年齢は関係ないですね。

ー今回のIVSで実利は得られましたか?

IVSがきっかけで投資が決まったみたいな話は現状まだないですが、Exhibition Pitchでは、投資家の方に今後事業を運営する上で参考になるフィードバックをたくさん頂けました。

悲しかったことを一つ挙げるなら、オーディエンスが少なかったのが少し残念だったかな。ただ、タイトなタイムテーブル内に自分の枠を作ってもらい、そこでピッチする機会を頂けたことはとても貴重だったと思っています。ありがとうございました。

また何より良かったのは、家にいながらIVSに参加できたということですかね。テレビのチャンネルを変えるように気軽にいろんなセッションに遊びに行けたのも良かったです。ぜひまた参加したいですね!

 

ーありがとうございました!

 

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sora:share(ソラシェア)


取材・編集 : 川島康平/西島伊佐武