【株式会社toraru】移動できないを解決!人と人を繋ぐ疑似どこでもドアサービス!「GENCHI」
2020.07.27株式会社toraru 代表取締役 西口 潤
ビジネスの開始は高校2年生。帝塚山大学(教養学部日本史専攻)卒。就職活動時に売込む営業力があることに気付き、新しい能力を求めてIT企業へ。そこで企画から開発能力を得る。独立後、1人メーカーを経験。顧客目線の「使える」レベルで、問題解決を行ってきた。大手商業施設にも導入実績有。ロボット提案等も行う。「行けない」解決を実現するためにtoraruを設立。
技術を得るためIT企業に就職
ー現在の会社を設立するまでのことを教えてください。
起業のきっかけとしては、ちょうど大学を卒業する頃のベンチャーブームです。2001年卒業だったので。
IT企業を作るには、どうすればいいかと考えた時に、最初の一歩としてIT技術を身に着けたいと、複数内定を頂いていた中の中堅規模のIT企業を選択して入社しました。
僕は文系の大学出身なんですよね。日本史コースに所属していて、全く関係のないところから、その時はそれがIT企業設立への早道と考えて行動しました。
そこから、ステップアップで他2社を経て、入社していた銀行の子会社が合併して本社移転を行ったタイミングで、会社員ながら始めかけていた事業を主軸にしようと考え、独立しました。
ロボットを販売するも…
最近でこそ少し変わってきましたが、関西ではスタートアップではなく、スモールビジネス的な進め方が今も昔も東京と違って主流です。
知人の声掛けで始まった、当初は3人で始めたIT機材製造販売企画も、当初見込まれた代理店販売ルートが予想外にうまく進まず、結果的に1人で企画からサポートを行うメーカーとなりました。
そこから展示会での逆営業を機に、規模の大きな同業に近い会社と、考えも及ばなかった協業で、有名なラーメン店に提案することができたり、WEB経由で大手商業施設や病院、郵便局など導入する仕事が頂けたりと幸運に恵まれました。
同時に複数の大手企業がインターネットで検索して当時の会社のページにたどり着き、依頼をしてきたことからも、今後はオンラインであるWEBの力が大きくなることを感じました。
自分自身で、ものづくりの企画から販売・サポートをして得られたのは、「できる」と「使える」は全く別だという体感でした。
今では、ハードウェアが安価なので、インターネット上で調べれば、希望の動作をしてくれるだろう、希望を満たす「できる」ものは簡単に作れます。でも、きっとそのままでは、それを使う人にとっては「使える」ものではないことが多いのです。
それを「使える」(=つまり実用性がある)レベルに仕上げることに多くの時間がかかりました。しかしながら、小規模ながらも全てのパートを担うということは、非常に多くの気付きがありました。
このように試行錯誤している内に、自分の持っていた大きな課題を解決してくれると感じた、テレプレゼンスロボットという種別のロボットに偶然出会います。今では概念がアップデートされて、テレイグジスタンスと呼ばれたりしますが、遠隔地で人が操作するタイプのロボットです。
それをシステムと組み合わせてソリューションとして販売したりしました。しかし、ロボットは全く売れなかった。自分自身も購入して検証しましたが、実用性がなかったことが原因でした。
何故なら、そのロボットを動かすには、お店などでは安全のために横に人がついてないといけなかったのです。つまり1台動かすのに遠隔地のパイロットと現地側で動きを補正する、計2名必要という、むしろ人件費がかかってしまうというレベル感です。しかも、そのロボットが1台50万円から100万円もしているのです。
そんな感じで、やっぱりレベルがまだ低かった。そのロボットの販売が米国で始まったのが2012年です。今のロボットもそんなに変わってないですね。総合的にまだサービスロボットっていう分類がまだまだ実用的ではない。
なので、当面はロボットじゃなくて他の手段、テレポーテーションができればワクワクできるんじゃないかっていうのが今の事業の最初ですね。
ロボットではなく、高速になってきている通信を利用し、高機能になってきているスマートフォンと組み合わせて、その場にいる人にやってもらえたらと考えました。そしたら、インドでも、インドネシアでもドイツでもどこでもいけるんじゃないかと思いました。
将来的にドローンやロボットとも接続するのは当たり前の考えなのですが、ロボット開発は他社がやってくれているので、弊社では世界中にネットワークを張って、誰もが現地に行けることを優先しようとしています。
また非常に高性能である人間をロボットに見立てたことで、他社に先駆けて実証実験が進められて、特許を取得していくことが可能な状況になりました。現在特許は2件ですが、両方とも現在海外特許出願中です。今後も伸びていくだろう遠隔業界の特許の取得に今後も投資していく予定です。
そしてスマートフォンのカメラによる視覚やマイクによる聴覚だけでなく、五感の他のパートを持つ会社との連携も進めています。
東京と大阪の格差
ー大阪で会社を立ち上げる中で、東京との環境の格差を感じることはありましたか?
それは、ものすごくありますね。中小企業を作りたいのか、中小企業を作るノウハウが多いからか、地道なビジネスが好まれるのか、明確な理由はわかりませんが、今でもスモールビジネス的な企業を育てようとしていると感じています。
スタートアップという言葉さえ、まだ支援側でも意味を理解されていない方も多いですね。たとえば資金調達で行く先で、非常によく聞くのは政策金融公庫での数百万円の融資です。
私の会社は1350万ぐらい投資して頂いているのですが、そのうち約1000万を出資して頂いた会社と出会ったのは東京でした。でも、実はその会社は京都の会社なんですよ。京都の会社と東京で会うっていう(笑)
西の方だと福岡は進んでいるようで、そちらに行けば、と言われたことも何度かあります(笑)
ー多くのスタートアップ関連イベントに参加されているんですか?
そうですね。やっぱり知ってもらわないといけないので。今は微妙ですけど、東京に行く方法なんていくつでもあるので。
安く行こうと思えば夜行バス使えば良い話です。いろんな方法があるので、顔を出しに行って覚えてもらって、コネクションを作っていくっていうのが重要かと思っています。
行けないを解決する「GENCHI」(ゲンチ)
ー事業について、ご説明いただけますでしょうか?
弊社のビジネスは、現地に行けない方に現地にいる方をリアルタイムで接続して、現地に行けないを解決する、現地作業代行アバターサービスというものです。
出張行きたくないとか、今で言うと、県をまたいでの移動は嫌だとか、そういうこともあると思います。
私自身、家庭の事情から長く外に出れない不自由者であったことから、現場に行けないっていう課題を感じていました。最初はロボットでこれを解決できると思っていたんですけど、まだまだ実用的ではなくて。
実際に昔、売っていたロボットが、電波状況が悪いといきなりロストして動かなくなったり、通路の真ん中で止まっちゃったりとか、まだ機能的に実用性が低いと感じました。そこで、高価なロボットよりもその場の人間に行ってもらおうっていうことで立ち上げたサービスが「GENCHI」です。
今は、私とエンジニア、デザイナー、営業、アドバイザーを入れたチームでやっています。
上図のように、左側の男の人の不動産会社が扱っているビルに不具合があり、今から行かないといけない場面ってよくあるんです。その時に、GENCHIを使えば、リアルタイムで現地の人とつないで、移動しなくても原因の追究や補修箇所の発見をすることができます。
自分自身がテレビ電話に出て、その場で修理を工事会社にお願いできると、一歩も会社から出なくても対処できるんです。
これをわざわざ、足を運んでとなると、自分自身の動くコストもあるし、時間もあるし、移動時間もありますよね。
そこを全部ショートカットできるので、代行で建物などの見学・下見、リサーチ調査、点検・検査などに利用可能です。また、海外の状況であったり、今はないですが展示会だったり、スマートシティーや購入する不動産の建設の現場とかも見に行けます。
これがGENCHIのサービスです。
使い方はとてもシンプルです。ユーザー登録して、掲示板に詳細を書き込みをすると、希望地のエリアのユーザーに通知が届きます。その条件に興味を持ったユーザーが作業の代行を行います。
パラレルワーカーのような方々が、代行をやってくれています。今だとウーバーで働き手をやっている人などが弊社でも働いてくれる感じです。働き手も、GENCHIを収入源の一つとして考えていて、金額とタイミングが合えば、現地にいる人の体をボディシェアリングさせてくれるのです。
そして必要があれば、スマートフォンアプリを通じて視覚・聴覚を共有することもできるので、これまでオンラインではできなかった、お外での仕事が可能になるということです。
依頼者はこれまで交通費を払って、その場に行かざるを得なかったところ、今後は、その場所にいる働き手に人件費とGENCHI利用料の対価を払うことで、無駄な時間がなくスピーディに現地に接続できます。
また働き手は、その地にいることが価値になり、新たな仕事を得ることができます。
現在、海外展開を模索しているというところです。スマートシティーでも採択が出ています。
マネタイズとしては、仲介手数料という形で、10%から50%程いただきます。システム利用料が高額になればなるほど、手数料が安くなる仕組みです。
基本的に、BtoBから始めようと思っています。金額としては、4000円から、大きければ30万円ほどです。
実は飛行機に乗れてない人たちの割合って全世界の人口の94%もいるんですね。それで計算するとだいたい72億人近くの方々が飛行機に乗れない。今はコロナでもっとこの割合が上がってると思うんですよね。なので、今、ほとんど行きたいところに行ける人がいないということなんです。
そういった方々向けの仕組みとしてやっています。
最終的にはロボットとかドローンとかも使いたいと考えています。ドローンを持ってる人だったらドローンを1時間貸し出して運用するみたいなことです。ロボットを持ってる人だったら、例えば博物館にロボットを置いて、ロボット経由で館内を見れるような仕組みだったりを考えています。画質がよくなってくればVRも使いたいです。
世界に順次配置していくというのも目標です。現在は、国内の人数が1300名ぐらいで一番多く、海外はまだ少ないですが、海外の導入も増やして行きたいと思っています。
toBから入って、個人にも広げながら世界最大の疑似交通網にしたいと思ってます。
グローバルに展開する際の言語の壁をなくすために、スマホで十字キーを操作することで、言葉が通じなくても、移動の指示を送れる技術を特許取得済みです。他にも、これ取ってなどを伝えられる簡単なボタンなどの拡張も考えています。
世界中のすべての企業・人に新しい移動を提供しようとしています。
ーサービス利用者はどのようにリーチしましたか?
ワーカーをやってくれる人がどれだけいるかが最初の懸念でしたが、応募方法を工夫するとたくさんの人からご応募いただくことができました。
最近では、コロナの影響で、務めていたホテルや、バス会社などから解雇されてしまった方々からも応募して頂いています。非常に人数が右肩上がりに増えつつあるっていうところですね。
これからもおそらくこの後、東京大阪間の移動等ができずに困ってるケースも多くあると思うのでここで使っていただければなと考えています。
法人のクライアントは一緒にビジネスを作るという形でアクセラレータープログラムに採択頂いたところにご利用いただいています。一昨年、昨年と、数社からアクセラレーションプログラムの採択をいただくことができました。
例えば、某量販店さんだったら、離れたところから店内のものを買う時に、2018年時点ですでにこの仕組みを利用して頂いています。会員カードの情報をバーコードで読み込み、テレビ電話経由で店内の商品を閲覧して、決済まで完了することができます。
資金調達はイベントから
ー資金調達についても教えて下さい。
一つは、CEATECというイベントがきっかけです。
そのイベントに行った際に、審査員の方々が近くにいたので名刺交換をして、事業の説明をしていたら、「うち投資もやってるからいつでもおいでよ。」と言っていただいて、トントン拍子で、最初の300万を投資してもらいました。
そもそも大阪にいて投資のことが身近でなく、相談する先も少なく、なかなか大変でした。でも、何事もやってみないとわからないので、良い勉強になったと思っています。
2社目は、採択されたアクセラレーターの中間発表会の時に、関西でやってはるんやったら話しましょうかみたいな形から発展させることができました。そのイベントは小規模で参加者も少なく、穴場感がありました(笑)。
そういった風に、色々なイベントに足を運んでいく中での縁が大事な部分もあるのかな。その頃より今では数が増えているので、支援が多すぎて、取捨選択に時間をとられてしまうことは注意が必要ですね。
ーコロナの影響は資金調達にありそうですか?
うちはそうでもなくて、逆にコロナ前から考えてたっていうのが不思議なぐらいマッチしているので、あとはやり方次第というところです。
でも、大阪だと2月くらいにすべてのリアルイベントが止まったので大変でした。地方だと都道府県や市町村がメジャーなスタートアップイベントに関わっているんです。なので、知事がイベントを止めると言った事により、僕の本社周辺での2週間ぐらいの予定が全部白紙になりました。
それに比べ、東京でのイベントは止まったものも、実行されたものもあり、予定通り開催され参加できたものもありました。
地方での資金調達自体も難しいのに、そこでの資金調達と銘打たれたイベントは3件あったので、全部潰れてしまい結構厳しい。オンラインイベントでは、リアルイベントではできていた、ちょっと個別に相談するということもできず、そういう意味での調達は厳しいかなと思います。
政府の補助の仕組み、例えばジェトロさんとかがやってる枠組みに応募するとか、そういった前向きな形にエネルギーを転換して何とかなりそうかなっていうのが今のところです。
新しい移動を提供し、新しい体験を
ー事業を進めていくモチベーションになった出来事やこれからの展望を教えてください。
足の悪いおばあさんに介護施設でデモをやっていただいた時に言われた言葉はとても嬉しかったです。
そのおばあさんはデモが終わった後も、みんなが帰るまで席に残ってくれていて、僕が片付けをしているときに、「いやあ、今はこんな方法で歩くことができるんだね。デモで体験できたところに昔、住んでたのよ」という話をされました。
年配になると、遠くだったり、人込みだったり、いけない場所が多くなります。それでも、実際に行けないところに行ける、こういう方法があるっていうことに驚いていたし、感謝されました。自分の目でっていうのは少し違うんですけど、それぐらいの思いでデモに参加してくれました。
その後に、インドとか中国だったら10万円払ってでも私は行きたいという話もしてくれました。新幹線の値段と一緒で、強い目的があるとそこにお金を払ってもいいと思うんです。旅費って感覚なんだろうと思います。
私たちが目指してるのは本当にそこに行ったことと変わらない体験です。
韓国などでもテストをしているのですが、韓国に対するイメージがあまり良くない人って多いんです。でも、実際に一度行ってみると、僕は大好きになりました。
でもそれって、一度は行ってみないとわからないんです。そんなときにGENCHI使って、現地の人を通じて街を歩いてみて、おもしろそうだったからここに行こうかみたいな、そういう風に広まっていってほしいです。
人の肩に乗って歩くみたいな感覚で、新鮮で面白いと思うので、この楽しさを広めながら、仕事にも使ってもらい拡大させていきたいなと思ってます。
日本のオリンピックのときに外国人は来てないけど、お金も遠隔のQR決済とかで落とすし、実際、日本人ばっかに見えるんだけど、実はいろんな国の人たちが来てくれていてという風になればいいなと思っています。
ーコロナの影響は運営にありましたか?
以前から、うちはリモートだったので自分たちがやっていることにみんなが合わせてきたと感じています。運営的にはあまり変わらなかったですね。
ー最後に、IVSへの期待や意気込みをお願いします!
色んなイベントがオンラインになってから、オンラインの効果がどうなのかっていうのはまだよくわかっていません。
雑談の時間とかがないじゃないですか。なかなかリアルと違う感覚が多いし、みんないなくなっちゃうのも早くて、最後まで残ってる人も少ないですよね。
IVSは良いネットワークの機会だと思っているので、普段はつながれない人とつながりたいです。また、事業を推進するためにも、ここで目立っていければなと思っています。
ーありがとうございました!
ーtoraruのHP等はこちらから!ー
株式会社toraru
GENCHI サービスサイト
取材・編集 : 西島伊佐武