【株式会社SPARKLINKS.】歯医者で起業家の2児の母が医療業界の働き方改革!医療機関と医療従事者を繋ぐ「:Dspace」

2020.09.07

株式会社SPARKLINKS.

代表取締役 柴田 育 氏

歯科医師・歯学博士。2児の母。 北海道大学歯学部卒業。東京医科歯科大学大学院修了(咬合機能矯正学分野)。矯正歯科治療を専門としたフリーランス歯科医師。 育児と仕事の両立の大変さに直面し、閉鎖的な医療業界を、より働きやすい環境にするために、医療従事者のための双方向性の仕事マッチングサイトを立ち上げ。 育児中でもどのような状況の人でも医療の仕事がしやすい社会を目指す。

 

歯医者から起業家への転身

ー起業までの経緯を教えてください。

起業する前は本気で歯の専門を極めるために勉強や研修をしていました。私は矯正が専門の歯医者で、今も歯医者として働いています。

歯医者になるためには、まず大学の歯学部に6年間通って、国家試験に合格して、それから研修を1年間行う必要があります。私のように、更に矯正の専門をする進路を選ぶ場合は、だいたい最低6年間は大学病院などに在籍することが多いです。

私は、大学院にいる頃に出産を経験したのですが、本業と出産、育児を両立しながらキャリアを継続することにすごく苦労しました。

子育てをしていると、必ず6時くらいにお迎えに行かなければいけませんが、仕事をしていたら間に合いません。なので、延長をしますが、それでも間に合わずベビーシッターさんにお願いすることも少なくありません。

そんな環境の中では、子供が小学校高学年になって自立するまで約10年間、仕事と育児を両立するのは大変だと感じ続けることになると思います。

特に医療業界は柔軟な働き方に理解がない業界なので、医療の仕事が好きだからこそ、自分でもっと働きやすい環境に改革していきたいと思って起業しました。

 

医療のクラウドソーシング「:Dsapce」

ー事業について詳しく教えてください。

会社の設立は2018年の8月、正式にサイトをリリースしたのが昨年の12月で、医療機関と医療従事者が直接繋がることができるプラットフォーム「:Dspace」というサイトを展開しています。

このサービスの背景としては、あまり知られていないかもしれませんが、医療業界ではブラックな働き方が多く、長時間労働や土日出勤が当たり前であるということがあります。

歯科クリニックのスタッフたちは、患者さんは仕事が終わってから外来にいらっしゃるので、サラリーマンよりも遅い時間帯まで勤務しています。

私の場合は、都内の大学病院や大学院で働いていましたが、土日はバイトをして平日は大学病院で働いていたので月に2日くらいしか休みがない生活をずっと過ごしていました。

しかし、出産と育児を経験して、そのような働き方でのキャリアの継続が非常に難しくなってしまいました。これは私だけではなくて、医療業界共通の課題です。

一方で医療機関側では人手不足が問題になっています。一般に、医療機関が人を探す方法は大きく分けて2通りあります。

1つはツテです。医学部や歯学部の同級生や知り合いの紹介や、医局に所属してる先生の紹介などで人を探している医療機関が多くあります。

私の周りでは、急に欠勤が出ると知り合いのLINEグループなどで連絡を取って代わりを探すといったかなりアナログな方法がとられています。

もう1つは医療系の職業紹介事業や求人媒体です。

このように、あまりインターネットで便利に繋がれるサービスが整っていない状態で、ツテ以外に直接繋がる手段がありません。

そこでクリニックと医療従事者がすぐに繋がる自由で安全なツールが必要だと考え、Dspaceを開発しました。

Dspaceでは、歯科や医師などの医療系の国家資格を持った方が条件や勤務可能日時などを示したページを自分で作り、お仕事を受けることができます。

クリニックさんは早ければ当日中にやりとりをして、即日で勤務可能な人を見つけることが出来ます。

Dspaceには3つ特徴があります。

1つ目は、国家資格の認証制度です。自称医師など国家資格を保有していない人は使えないようになっています。

2つ目は相互評価です。取引後に、双方向に評価をしていただくようにしています。

3つ目はインターネットで直接マッチングする仕組みにしていますので、リーズナブルかつスピーディーに使っていただける点です。

今までは不可能だったツテと医局を超えて広く繋がることができるツールとなっています。

立ち位置としては人材紹介とは競合しないポジションです。イメージ的には一般の仕事のクラウドソーシングの医療版で、医療機関が医師資格を持った人と繋がれるサービスとなっています。

今使って頂いている方だと、例えば、医療系のWebの記事を依頼したい方やオンライン診療などの新規事業を立ち上げるので医師が必要なベンチャーさんなどがいます。

ビジネスモデルはクリニックさんや企業さんなどの法人に対する有料プランの月額会費になります。困ったときにすぐ使えるようにしたいと思っているので、医療機関は無料で求人掲載できるようになってます。

ターゲットは医療施設23万施設と、医療従事者や医療系の国家資格を持っている約370万人です。まずは、私が専門の知識持っている歯科の領域から市場を取っていきたいと考えています。

Dspaceの強みは、医療職であった私が立ち上げたので強い当事者の実体験に基づいたサービスであることと、医療系に詳しいので学会などとも関係を築きやすい点です。

また、会員さんにも医療の知見を持った方がたくさん揃っているので、今は医療機関向けのサービスになってますが、一般の患者向けの医療情報メディアなどの立ち上げもハードルがなく取り組めると考えています。

今後は単なるプラットフォームではなく、新しい働き方の浸透や人材育成をはじめとした医療業界を総合的にバックアップするサービスを構想しています。Dspaceでは、医療業界を健全にして豊かな医療を全ての人に届けることを目指しています。

ースポットで働きたい医療従事者側のユーザーはどれほどいるのでしょうか?育児をしている方が多いのですか?

特に、育児に偏っているわけではありません。フリーランスの方や大学病院に専門医として勤務していてそういった知見を生かしたい方、オンラインで医療系のライティングがしたい方など様々です。

実は、医者や歯医者のほとんど方は副業をしています。医療業界は複数の職場と収入源があるのが当たり前の業界なので、サラリーマンほど副業に対する抵抗は大きくないと考えています。

ーDXがなかなか進まないと言われている医療業界ですが、医療業界特有の難しさなどは感じでいますか?

私も悩んでいて、医療関係の仕事をしている友達に相談をしたりしています。やはり、医療業界はメールではなくFAXのユーザーが多いなど、かなりアナログな業界です。

弊社のサービスはオンラインで完結するものなので、そもそもパソコンができない人には少しハードルが高いと思います。

今は「Dspace Plus」というオウンドメディアの記事を通じてDspaceに登録して頂くなど、Web上から集客をして、インターネットの利用に支障がない方を中心にサービスを使って頂いています。

まだそこまで営業をやれているフェーズではないので、これから色々と工夫をしてユーザーを増やしていきたいです。

Dspaceでできること (Dspaceサイトより)

ー営業などで資金も必要になるかと思いますが、資金調達は考えていますか?

そうですね。今のところは自己資本でやっていますが、資金調達にむけて動き始めようとしています。

設立から2年ほど自己資本でやってきましたが、自分のお金だと限りがあるので、資金の用途や費用対効果を慎重に検討できるようになりました。メディアの立ち上げも、なるべくお金かけずに工夫して行いました。

なので、資金調達をした後に資金を最大限に活かせるようになるための良い準備期間だったと思っています。

ーコロナの影響に関してはどのように考えていますか?

私は育児中でどちらがといえば身動きが取りにくかったので、逆に世の中がオンライン化してくれてすごく助かっています。

IVSもリアルイベントだと参加が難しかったかもしれません。そこが、オンラインだったので簡単に参加できました。

一方で、お客さんと会いたいと思っていた企業展示やイベント出店などは計画通りにできなくなってしまいました。早めにこの状況に合わせて変えていく習慣を付けないと駄目だなと感じています。

ー今後の展望やビジョンを教えてください。

Dspaceは医療業界の働く方をもっと豊かにすることで、その先の医療を豊かにしていきたいと考えています。

ただ、何はともあれ、マッチングサイトなので、会員さんがいないことにはなりたい未来も実現できません。

しっかりと、医療業界を柔軟な働き方にしていきたいという考えに共感してくださる会員さんに入っていただきながら、ユーザーを増やすことが必要だと思っています。

医療現場というのは人の命を預かる場です。

患者さんが安心して医療を受けるには、医療を提供する場で、働く側と雇用する側の信頼関係が根底にあることが大事だと思います。

Dspaceはそういった部分に携わっていくので、そのためにも、焦らずに、中身を伴って着実に成長していきたいと思っています。

例えば、ユーザーさんがスキルアップができるような施策、雇用側の質をあげること、相性を相対化してマッチング精度をあげることなど、挙げればきりがありませんが、医療職の方が安心して働けるように、考えうることを取り組んでいきたいです。

現在は、ベビーシッター企業との提携などもさせていただいています。

もう1点は、現在は医療職向けには、メディアをしているのですが、資金ができたら、Dspaceに登録いただいている医療職のユーザーさんと一緒に一般の方向けに「さらっと正しい医療情報が読めるメディア」を作りたいと考えています。

1弾は、私もコミットして歯科(矯正系)でしっかりと行きたいと思っており計画をたてています。

今は、民間企業のアライナー矯正なども増えてきていますが、かみ合わせに不具合が出て相談に来る方もいて、最初にきちんとしたところにかかっていたらなぁ、、、と非常に気の毒に感じることもあります。

そもそもですが、「全ての人にこの治療をします!」というのは、まともな治療・医療ではありえないと思います。

過大広告や情報に患者さんが惑わされないように、判断材料になる情報源を用意しておきたいと感じています。

Dspaceのユーザーで、書きたい医療職の割合は高く、世の中の医療記事は、まだ良質な記事の割合は低いので、今後、医科、歯科どちらも患者さん向けにも何か良い変化を起こしたいです。

ー今回のLaunch Padに応募して頂きましたが、応募の理由や予選の感想などを教えてください。

私はもともと歯医者で、起業系の情報を全然知らない状態で起業したので、いろいろな経営者さんにお話を伺いにいっていました。その中で、「ピッチイベントに出るとコネクションも増えて良いよ」というアドバイスをもらい、IVSについても教えてもらったことが今回応募したきっかけです。

あまり期待をせずに応募をしたので、一次審査を通過したと連絡が来たときはとても嬉しかったです。仕事後に子供の世話を終えて寝ようとしていたのですが、飛び起きてスライドの準備しました(笑)。

当日は、人前でピッチしたことがまだ1,2回しかなかったのでものすごく緊張しました。途中で切られないかと思いながらピッチしていました(笑)。

お忙しい中、フィードバックもしっかりといただけて、すごくありがたく感じています。

ー最後にIVSに参加してみての感想を教えてください。

オンラインでこれだけ大規模なイベントに参加したのが初めてだったので、開始前はセッション数もいっぱいあって、Slackもツイッターもremoもあって、忙しそうだと思っていましたが、当日は逆にそれが楽しかったです。

セッションの後のブレークアウトルームで登壇者の方と当たることが多く、そこでは良いアドバイスいただけました。

「どうしたら良い人と会えますか」という質問に対して、「IVSのような場所でいろんな人と繋がって、起業家でも4年後も事業を継続できている人は意外と少ないから、いつか手伝ってほしいと言い続けていると、意外とすごい人が後で仲間になってくれる」と答えていただいて、なるほどと思いました。

普通のオンラインイベントだと参加して視聴すると終わりですが、Slackでまとめている方がいたり、コメントに対しても登壇者の方がその場で答えてくれたり、すごい交流があって新しい時代のオンラインイベントだなと感じました。

ーありがとうございました!

ー株式会社SPARKLINKS.が運営するDspaceのサービスサイトなどはこちらから!

医療特化型クラウドソーシングサイトDspace

追加コメント:弊社では、医療機関・医療者向けのプラットフォームだけではなく、「医療のはたらき方改革メディアDspace Plus」を通じて、医療職の方のキャリア経験や苦労の共有などで医療者の視野を広げて行く取り組みを行っています。

8月下旬に東京都教育庁との取組みで「医療的ケア児」に関わる非常勤学校看護師について取り上げました。

東京都教育庁監修Dspace Plus掲載記事「医療的ケア児と都立特別支援学校の看護師、その働き方とやりがいとは

日常的に、医療的ケアが必要な「医療的ケア児」(気管切開をしていて、痰の吸引が必要など)といいますが、「医療的ケア児」の教育環境で医療職が不足しています。ご家族の方も大変なので、ぜひ社会全般に広く知っていただきたいです。


取材・編集 西島伊佐武