【Holotch株式会社】 映画製作、海外起業。異色の経歴の起業家が日本で再挑戦!

2020.08.07

Holotch株式会社

CEO 小池浩希氏

Holotch株式会社代表取締役。ホログラム/Volumetric Video専門家。 アメリカの大学で映画製作を学んだのち、日本とハリウッド映画の撮影現場でマネジメント業務に従事。映像作家としても活動し、スタートアップでの新規事業の立ち上げ〜起業と、クリエイティブとビジネスの両面を持つ起業家。 2016年にCirque Du Soleil TOTEM360を監督するなど、5年以上VR/AR業界に携わっており、積み重ねた知見とネットワークを武器にホログラム市場を開拓する。

 

”If not Me, Who??”

ー起業のきっかけや、Holotchを創業するまでの話を教えてください。

僕は高校卒業後、アメリカで映画製作を学んでいました。その時の経験が今のキャリアに大きく影響を与えています。

アメリカのシリコンバレーにある大学に2005年から2008年まで通っていたのですが、当時のシリコンバレーはドットコムバブル後の焼け野原みたいな感じで全く活気がありませんでした(笑)

ただ、2005年にFacebookが西海岸にやってきて、2006年にYouTube、Twitterが登場し、2007年に初代iPhoneが発売されるなど、この15年間に起きたイノベーションの始まりのタイミングでもありました。

短期間で周りの生活がガラリと変わってしまうイノベーションの真髄を目の当たりにし、自然とスタートアップやテクノロジーに興味を持ち始めました。

帰国後は日本、オーストラリア、カナダで映画製作していたのですが、2014年にVRと運命的な出会いをします。

当時のOculusでは出来る事がまだまだ少なく、簡単なCGを見ることしか出来ませんでしたが、僕が興味を持った直後にFacebookが2000億円でOculus社の買収を発表したのです!まさに、これだ!と思いました(笑)

僕は実写映画を製作したのですが、実在する人物をバーチャル空間で見ることが出来れば相当面白いだろうなと想像し、映像の未来というか、映画の未来はこの中にあるんだと強く感じたので、だったら僕が実現する!なんていう勝手な責任感から起業しました(笑)

 

”If not Now, When??”

実はHolotchは2社目の起業でして、前社も同じホログラム技術開発のスタートアップをカナダのバンクーバーで創業しました。バンクーバーには優秀なエンジニアやクリエーターがいるので、先進的なXR都市として盛り上がっているのですが、元々スタートアップの土壌があったわけではなく、資金調達がめちゃくちゃ大変でした。

結果としてエンジェルラウンドは調達したのですが、シードラウンドの資金調達ができずに資金がショートしてしまい、不完全燃焼な状態で挑戦が終わってしまいました。

何もしなくても涙が出るくらい凹んで心がバキバキに折れたんですけど、起業家ならば誰しもが経験しうることですし、スタートアップは失敗の連続なので、倒産という経験から得た学びは大きいのかなと思っています。

2019年に帰国したのですが、タイミングとしてもホログラムはまだまだこれからの技術ですし、東京から再度挑戦してもまだ世界一になれると思い、今のHolotchを創業しました。

 

“We are the NEXT Pixar of VR/AR.”

「僕たちはVR/AR業界のPixarだ。」

これは、前の会社から継続して掲げているフレーズです。

Pixarはトイストーリーを製作した会社なのですが、映画業界の人からすると実はPixarはテックカンパニーなんです。Pixarが3DCG(コンピューターグラフィックス)という技術を開発して、その技術を駆使して世界で初めてのフルCGアニメーション映画のトイストーリーを製作したのです。

我々はPixarがCGを開発したように、エンターテイメントの中にホログラムという新しいカテゴリーを創造する!そういう意思表示なんです。

そして、ホログラムはエンターテイメントに限らず人々の生活を大きく変えていけるテクノロジーだと確信しています。

 

ホログラム視聴に必要な全工程を0→1で自社開発

ー事業についての説明をお願いします。

一言で言いますと、ホログラムを見るために必要な技術を0→1で開発しています。

まずホログラムの説明をさせて下さい。我々の開発しているホログラムは専門用語でVolumetrci Videoと呼ばれる技術で、通常のカメラで撮影された動画ではなく、VR/AR空間、つまり3D空間に表示される立体的な映像の事を指しています。

実在する人物などを3Dデータとしてホログラムキャプチャーし、現実世界と全く同じデジタルツインを作り出し、AR/VRで表示することを目指しています。このホログラムの基礎がまだ確立されていないので、この領域で世界標準になる基盤を我々が開発しています。

例えば、音楽にはMP3、動画だとMP4だとか、一般的に世界共通のファイル形式が普及していますが、ホログラムにはまだそれが存在しないんです。

3Dデータには様々なファイル形式が存在しますが、非常に使い勝手が悪い。

そこで、1からホログラムに最適化した専用のファイル形式を開発しています。

まとめると、ホログラムの撮影ソフト、撮影したデータを保存するファイル形式、そのデータを配信するインフラの構築と再生用のアプリを開発しています。この全工程を0→1で自社開発しているスタートアップなんです。

 

3Dデータのストリーミング配信を目指す

ー技術開発の部分でどのようなチャレンジングなことがあるのでしょうか?

3Dってデータ量がすごく大きいんです。

ポスターとフィギュアのどっちが重いかっていうとフィギュアの方が重たいじゃないですか。それと同じで、2次元の動画データよりも3Dデータファイルの方が圧倒的に重たいんです。

その重たいデータをいかに今あるインフラで配信するのか?そして、今あるデバイスで処理するのか?といった技術的な課題が存在します。

そもそも3Dデータはストリーミングに対応していません。

例えばYouTubeだとページを開いた瞬間に動画が再生されますが、3Dではそれが出来ないので、全データを一度ダウンロードする必要があります。

我々は、ホログラムを使ったコミュニケーションや、イベントのホログラムライブ配信を実現したいので、ストリーミングに拘って設計し開発しています。

 

ポストスマホ時代の幕開け

今後10年で、おそらくスマホの役割は一旦終わると思うんです。

そして、2030年以降のポストスマホ時代の競争がすでに始まっています。

我々はVR/ARが次世代のインタ―フェースだと考えていて、そこで扱われるものは必然的に3Dデータが中心になる。現在のスマホ時代のライフスタイルをVR/ARに置き換えていくにはホログラム技術が必須になるので、ここで世界のトップを目指しています。

ホログラムの市場を開拓するため、求められるユースケースに応じたサービスを提供するために、今は基礎技術開発に集中しています。

そして、実際に波が来た時に一番良い場所にいる。そんな中長期的な視点で経営しています。

ーXR人材の市場はどのような状態なんですか?

日本でも世界でも、VR/ARの人材は圧倒的に足りていないですね

2020 State of Software Engineers より

例えば、先日Twitterでも呟いたんですけど、2018年から2019年にかけてグローバルでのAR/VRエンジニアの需要が1400%伸びてるんですよ。エンジニアも全体的に伸びているんですけど、AR/VRエンジニアの需要は一桁も二桁も違います(笑)

優秀な人材の確保は、本当に急務だと考えていますし、育成も大事になってくると思います。

Holotchの採用方針では、VR/ARの開発経験を必ずしも重要視しておらず、なるべく他分野から幅広く優秀なエンジニアを集めようとしています。

AR/VR技術の進歩は速いので、常にアップデートされ効率の良い方法や新しいツールがどんどん出てきています。なので、今ある経験よりも、新しい情報に素早くキャッチアップし続けられる能力が必要になってくるのかなと考えています。

ー資金調達についても教えてください。

今はSkylandVenturesさんから出資して頂いています。

VR/ARはまだ様子見というか消極的な方々も多いですし、ゴリゴリの技術開発のスタートアップなので、理解されにくかったりします(笑)

ただ、新しい領域に積極的に投資するVCもいるので、これからそういった方々にアピールしていこうと準備している段階です。

そんな中でコロナが来てしまったので、現状なかなかうまく動けていません。

また、最初に起業したのがバンクーバーだったので、所謂日本のスタートアップコミュニティに知り合いが多いわけでもなく、今回IVSという場でネットワークできたことは本当に貴重な機会だと感じています。

ーバンクーバーやシリコンバレーでの資金調達の際と比べて、日本の資金調達環境はどう違いますか?

日本で順調に資金調達をしているわけではないので、僕が言うのは正直恥ずかしいのですが、圧倒的に日本の方が簡単です(笑)

両方とも経験した方々は100人中100人が口を揃えて日本の方が簡単と言いますね。

先ほどのコミュニティについて言えば、シリコンバレーのコミュニティこそ非常にクローズドなんですよ。

僕も前社で資金調達に行きましたが、全く相手にされなくて毎日のように泣いてました(笑)

お互いの時間を無駄にしないというリスペクトが前提でにあって、興味がないと話も聞いてくれないし、紹介で会っても数分ですぐにスパッと切られます。めちゃくちゃメンタルきついですよ(笑)

毎日のように世界中の魅力的なスタートアップからコンタクトが来ているので、冷静に考えれば当たり前な話ですよね。

僕がシリコンバレーに挑むには早すぎたんですね。プロダクトをローンチしてある程度トラクションが出て、勝ち筋の仮説に説得力を与えてられる段階じゃないと行ってはいけない場所だったんだと思っています。

ただ、海外挑戦は諦めていません。2019年の世界のVR/AR市場の日本のマーケットって8.6%だと言われているのですが、それが2023年になると、シェアは2.1%まで縮小すると言われています。

これからVR/AR市場が盛り上がってくるタイミングで日本の小さい市場で勝負するのか、アメリカや中国といった大きい市場でグローバルな戦いをするのか。どちらが大きく成長出来る可能性があるのか?っていうと絶対にグローバルじゃないですか。

ですので、将来的には海外展開を予定しています。そのために、海外で戦えるようなチームを組んでますし、今後の資金調達も海外展開を見据えてやっていきたいと思っています。

 

新しい未来を想像する楽しさ

ーVR/ARやホログラム事業に取り組む魅力はどんなところに感じていますか?

ある方が「将来のある地点から振り返ると、人類の歴史の中でスマホの時代はすごく短くて、その後のVR/ARの時代の方が圧倒的に長く影響が大きかったよねって言われるようになる」と言っていて、すごく共感しました。

スマホって便利だけどまだまだ不満な所もいっぱいある。

それが、VR/ARではデジタルをストレスなく直感的に操作できて、音声アシスタントと会話するだけで様々な処理を並列して行ってくれる。

そういう新しい未来を想像するのは楽しいです。僕は映画やストーリーをつくっていた側の人間なので、想像力が取り柄なところもあり、このタイミングでVR/ARに携わっているのが楽しくて仕方ないです。

VR/ARが普及した時は、人類にとってスマホよりも大きいなインパクトになると信じているので、ここで挑戦して得られるものは、スマホ時代に成功した方々が得たものよりも大きいだろうと思っています。なので、今はすごいワクワクしかありません。

ーコロナの影響はどう考えていますか?

中長期的に考えると、ホログラムの浸透するスピードとタイミングが大幅に加速し、前倒しになったと思ってます。

ホログラムのコミュニケーションがあったとしても、コロナ以前はZoomで良いじゃんって皆さん言っていたと思うんです。でも、これだけ全員が強制的にZoomを経験したことによって、Zoomでは足りないとかZoomではできないことにステレスを感じてきています。その課題、ホログラムで解決できます!と言えるようになったことはすごく大きなことです。

ただ、ホログラムの良さとか楽しさって体験しないとわからない部分が大きいので、そこを体験してもらう事は今はまだ難しい状況です。なので、Withコロナで注目を浴び始めて、Afterコロナの段階で浸透していければと思っています。

ー今回Launch Padに応募されたきっかけや予選の感想、新設されたExhibition Pitchを終えた感想などを教えてください。

起業してから、LaunchPadの動画を見ることは多かったです。VRの会社もいくつか登壇していたり、過去に知り合いが登壇したりと、憧れの舞台ではありました。

ですが、まだプロダクトのローンチもしていない段階なので、今回はまだ時期尚早かなと思っていました。そこを、投資して頂いているSkylandVenturesの木下さんに「ここで得られることは多いから」と背中を押され、応募しました。

光栄なことにExhibition Pitch枠でピッチすることが出来ました。

個人的に感動したことは、IVSでのフィードバックでは予選も含めてどれもとてもポジティブというか、参考になるアドバイスばかり頂けた事です。Exhibition Pitchで担当頂いたフューチャーベンチャーキャピタルの松本さんは、たった5分のピッチで僕の本心を見抜いたというか、逆に僕が心を掴まれるくらい有難いお言葉を頂きました。その後投資家の方々にDMを頂いたり、もう本当に「木下さん、背中を押してくれてありがとうございます」って感じです(笑)。予選で投資家の立場になって、紳士的にピッチを聞いてくださった審査員の方々にもとても感謝しています。

ーIVSに参加しての感想や収穫を教えてください。

コロナの影響で一番抱えていた課題がネットワーキングだったのですが、IVSで期待以上の収穫を得る事ができました。ネットワーキングは始めの一歩なので、ここから実を結ぶような活動が出来ればと思います。

ピッチできた事もそうですし、2日間のセッションで学ぶ事は本当に多かったです。資金調達や、エンタメ関連のセッションが多くあり、個人的にはドンピシャで必要な情報だったので、とても参考になりました!IVSには本当に感謝しかありません。

 

ーありがとうございました!

ありがとうございました。是非、今後も継続してIVSに参加させて下さい!

 

ーHolotchのHPはこちらから!

株式会社Holotch

 

取材・編集 : 西島伊佐武