スタートアップのバリュエーションはどう決まるのか?

2020.11.16

※この記事はInfinity VenturesのパートナーVCであるE-VenturesのBrendan Wales氏が投稿したブログの翻訳です。元記事はこちら


スタートアップの世界は今、大きく変わりつつあります。往年のスタートアップのバリュエーションの決め方は既に過去のものになってきています。

どうしてでしょうか?

なにが起こっているのかを説明するために、ここでは、ブル・ベアマーケット(強気・弱気相場)それぞれの資金調達環境の中でスタートアップのバリュエーションがどう考えられているかをご紹介します。

ベンチャー企業がどのステージでも投資家市場が要求する本質的価値と知覚価値の比である「イントリンシックバリュー ディマンドカーブ(本質的価値の需要曲線)」についてお話しします。(何を言っているか分からなくても大丈夫。最後まで読めば理解できると思います。)

ベンチャー企業の評価は、この2つの価値の合計に過ぎません。

本質的価値(Intrinsic Value)

ウォーレン・バフェットが提唱する本質的価値とは、企業の将来のキャッシュフローを推定し、決められた割引率で割り引いたものです。

ほとんどのベンチャー企業はIPO直前かIPO以降までキャッシュフローを生み出すことができませんが(2019年の消費者向けIPOの内訳についてはこちらを参照)、ベンチャーキャピタリストが投資判断を行い、最終的に提示するバリュエーションを決定する際には、事業を長期的に捉え、将来のキャッシュフローなどを考慮しています。
例えば他には、「事業がスケールした時にどの程度の粗利益率を確保できるのか?」「利益率はどこで横ばいになるのか?」「成長予測はどれくらい合理的か?」などです。

知覚価値(Perceived Value)

知覚価値は本質的価値とは見なされないがビジネスに貢献する価値のことです。いくつかの例としては、チーム、市場での戦略的ポジショニング、また参入している市場などがあります。

通常のマーケットのケース

以下の図はスタートアップの各ステージにおいて、その価値のうち、本質的価値と知覚価値の基本的な比を表した一例です。

このように、事業形成の段階では、事業の価値は本質価値ではなく、ほとんどすべてが知覚価値です。シード投資家は、ユニークな製品を持ち、大きな市場に取り組む素晴らしいチームへの投資機会を探しています。

そして、ベンチャー企業が規模を拡大するにつれて、本質的価値も増加し始めます。収益予測が比較的容易なビジネスであればあるほど、知覚価値に対して本質的価値は大きくなります。ビジネスの将来のキャッシュフローが予測しやすいためです。

IPOが近づいて来る頃には、知覚価値は本質的価値と比較してほんのわずかな割合にまで減少しています。

ブルマーケットのケース(Bull Case/強気相場)

ブルマーケットでは、曲線がフラットになり、右にシフトします。さらに、IPO後も知覚価値は高い割合で維持されています。投資家は経済的なファンダメンタルズよりも、ビジネスチャンスの直感を重視する傾向があります。

ベアマーケットのケース(Bear Case/弱気相場)

ベアマーケットでは、曲線が急勾配になり、左にシフトします。知覚価値が通常よりもはるかに早く消えていきます。企業の価値は、将来のキャッシュフローにほぼ依存するようになります。

現在の資金調達環境

この数ヶ月間で、ほとんどのスタートアップの創業者は、ブルマーケットの資金調達環境が厳しいベアマーケットへと変化してしまったと感じているでしょう。その理由をいくつかご紹介しましょう。

1、ベンチャーキャピタルは既存の投資先の管理や格付けに集中にしているため。
2、パンデミック以前の対面での投資判断からリモートでの投資判断への行動変容が大きな影響を及ぼしているため。
3、投資家が実際に会ったことのないチームへ投資は大きなハードルになっているため。
4、多くの主要な市場では、需要の予測が困難になっているため。(例:中小企業向けソフトウェア、必須ではない企業向けソフトウェア、オンライン小売、旅行)

こういったことが、新規のベンチャーキャピタル投資の数を減少させ(つまり、投資家間の競争が発生している)、本質的価値の需要曲線を左にシフトさせています。

資金調達を考えているスタートアップの創業者にとって、これは何を意味するのでしょうか?

本質的価値の需要曲線が急勾配になり、左シフトしていることを考えると、ほとんどの企業は、資金調達のラウンドの間に、より多くの本質的価値を生み出す必要があります。知覚価値は、もはや方程式の重要な部分ではありません。

その結果、企業のバリュエーションを上昇させるためには、本質的価値をドルベースで知覚価値の損失以上に増加させなければなりません。


翻訳・編集 / 西島伊佐武