データ分析はスタートアップの業績予想に役立たない!?:Tik Tokとその急成長

2020.11.02

※この記事はInfinity VenturesのパートナーVCであるE-VenturesのBrendan Wales氏が投稿したブログの翻訳です。元記事はこちら。


時には、結果が予測をはるかに上回ることもあります。

ここでは、TikTokにまつわる話とそこから学んだ重要な教訓をご紹介します。

2015年7月6日

パートナーのTomが私ともう1人のパートナーのJettに以下のメールを送ってきました。

(Musical.lyについて話したっけ?この成長は最高なんだけど、インスタの影響が強すぎるかな?)

送られてきたグラフを見ると、ローンチから3ヶ月も経たないうちに、全米トップ1,500アプリの圏外から総合5位に急成長していました。

Tomがこのメールを送ってきた時には、米国のiOSでのインストール数は1日に35万件を超え、全米1位になっていました。

C向けビジネスに特化したアーリーステージのベンチャーキャピタリストとして、ソーシャルネットワークのような可能性を秘めていて、アプリストアのトップまで急上昇しているC向けのアプリを見ることほど素晴らしいことはありません。彼らは数々の強豪を打ち負かしていました。FB Messenger、Instagram、Pinterest、Netflix、Snapchat、Spotifyなどです。

そしてそれは、私たちにとって最大のチャンスです。投資するために目を向けてもらえるように私たちはどんなことでもします。

(App Annieでは、過去のランキングは新しいアプリ名で更新されます。この場合はMusical.lyからTikTokに変更されています。)

2015年7月7日

私たちは彼らとコンタクトを取るために様々な手段をとっていました。幸運なことに、代表のAlex Hofmannが私たちが彼らのInfoメールに送ったメールに返信をしてくれました。

(Brendanさん、共同創業者のAlex ZhuにCCをしています。
ご連絡ありがとうございます。ぜひ、お話がしたいです。今週、シリーズAの資金調達の最終決定をしようとしていたのでとても良いタイミングでした。いくつかのオファーをいただいており、決定までの期限が迫っています…
アメリカ太平洋時間の7月7日午後2時30分からお話しできますか?
Alex Hofman  musical.ly 株式会社)

短い電話で数字の確認をした後、パロアルトを拠点にしているAlexに、水曜日にサンフランシスコで直接会ってもらうようにお願いしました。

2015年7月8日

他の共同創業者たちは上海を拠点にしていることがわかったので、エンゲージメントデータを聞き、私たちのパートナーであるAkioに彼らと次の日に上海で会うことができるか尋ねました。

(Alex,先ほどはありがとう。私たちのアジアチームとも話をしました。そこでデータを分析をしているパートナーのAkio Tanakaがいくつか質問があるというのだけれど、答えてもらえますか?

上海にいる2人の共同創業者の名前は?
上海のオフィスの住所は?
上海の会社の名前は?
中国の投資家用のピッチデックがあればシェアしてもらえますか?
彼は明日の夕方にオフィスに伺えるかもしれません。

データに関して、以前のメールに開示可能と書いてあった数字に加えていくつか追加で教えてくれると助かります。)

(インストールとエンゲージメントデータ
ローンチ後のデイリーインストール数
ローンチ後のデイリーユーザー数
ローンチ後の1日あたりのビデオ投稿数

セッションごとの事象:今はまだ開示できないデータ
音楽が試聴された回数
音楽、ショート動画、インポートされた動画をみた人の数
再生されたクリップ音楽の数
音楽制作を始めた人の数
ビデオ視聴後、音楽のソースを閲覧した人とShoot Nowを選んだ人の数

ミュージカルごとの事象:今はまだ開示できないデータ
Privateに保存された比率と投稿された比率
Postをしたユーザーがシェアしたプラットフォームの比率(インスタ、フェイスブック、ツイッター、メッセンジャー、WhatsApp、Vine、メール、Message、ライン、リンクのコピー)
1日目と1週間目の平均コメント数
1日目と1週間目の平均いいね数)

7月9日

Akioが私たちのメールを見たのは彼の現地時間で9日の早朝でした。それを確認した後、彼は北京での全ての予定をキャンセルして、夜に共同創業者たちと会うために上海に飛んで行きました。彼らは上海郊外のCEOの自宅で仕事をしていました。ちょうどその日の夜に、Android版のアプリをローンチしていたところでした。

Akioがミーティングを終えたあと、私たちは短いモーニングコールをしました。(Akioにとっては夜ですが。)この時点で、私たちが明日までに投資判断をしないといけないことがわかりました。

(Musucal.lyのCEOと4時間話してきた。もうすぐ寝るところだけど、30分くらい話せる?)

契約

驚異的な成長を考慮して、同社は 「1,000万ドルのラウンドを1億ドルのポストマネーバリュエーションで調達している」と言った。それは起業家やVCの言葉で言うと、「現時点での価格」がそれであるという意味だ。

決断の時

ご想像できると思いますが、1,000万ドルの投資判断には多くの分析が必要です。

先ほどの提供されたデータに加えて、いくつかの項目をチェックする必要がありました。

・チームはこのようなインフラストラクチャーを拡張するのに十分な能力を持っているか?
・エンゲージメントは他のソーシャルアプリと比較してどうか?
・これは単なる機能なのか、それとも本当のプラットフォームなのか?
・Instagramへの依存度はどうか?
・音楽著作権の問題はあるのか?
・伸びしろはどれくらいあるのか?
・成長は継続できるのか? 

などです。これらの中には予想できるものもありましたが、見当がつかないものも多区ありました。

リスクと報酬については、ソーシャルアプリケーションへの投資は、a)0か100かであり、b)1億ドルの評価額であっても、非常に有利な投資である可能性があります。1億ドルの評価額でFacebookに投資したアクセルは、その例です。

私たちは、エンゲージメントについては非常に良いと感じていましたが、大きな心配事は、アプリがアプリストアの上位に移動するペースでした。

以下の2点が私たちが気にしていたことです。

1、当時、アプリストアで長く上位にランクインしているアプリは、トップ10に到達するまでに1年以上かかり、その間にほとんどのアプリがコンスタントに成長していました。例えばSnapchatは、1,500位にランクインしてからトップ10に到達するまでに9ヶ月かかりました。一方、Musical.lyは2.5ヶ月でトップ10に到達しました。

2、これは単なる一発屋アプリかも知れないということです。ソーシャルネットワークを構築するのは、砂の城を構築するようなもので、しっかりとした基盤がなければ、最終的に成長を維持するのは難しい。それを考えると、ユーザーがアプリに時間を割くことに十分に専念できていないのではないかと心配していました。前の夏にYik Yakを見ていたのですが、あれだけ急成長したのに、それがどれだけのスピードで落ちていったかを見ていました。あのビジネスは(大学生を中心とした)流行りものだったので、多少の落ち込みは予想されましたが、トップ10を維持することはできませんでした。

このような懸念があったため、当時社内のデータ科学者であったMorten Hustveitは、アプリストア分析を実施し、Musical.lyと同じペースで成長したすべてのアプリのパフォーマンスを調べることにしました。

決断

投資を見送ることにしました。

アプリがそこまで早く成長して、実際に上位に留まることはあり得ないと、私たちのデータは示していました。それまでのランキングの急上昇よりも、その判断には深い洞察がありました。

1、ただのユーティリティ(当時はまだ各ユーザーが1日にアプリに費やした時間がかなり少なかった)であるかのような気がしました。

2、これはInstagramの “レール “に乗ってアプリストアのトップになっただけなのでしょうか?人々はInstagramにMusical.lyのビデオを投稿しており、それがインストールを促進していました。Instagramが表示内容をコントロールしていることを考えると、これは大きなリスクでした。

3、アプリは、トップのソーシャルネットワークが持っているコミュニケーション機能を持っていませんでした。

正しい決断に思えた

その後の3年間、私たちはこの決定について良かったと感じていました。米国のトップ100にはランクインし続けていましたが、企業価値の大部分を生み出すトップ10には一貫してランクインする状態ではありませんでした。例えば、今日(2020年3月27日)のトップ10アプリには、Facebook Messenger、Instagram、Disney +、Zoom、Netflixがあります。

しかし…

2017年11月9日、Musical.lyは中国のソーシャルネットワーキング企業であるBytedanceに~$1Bで買収されました。
そして、その後10ヶ月以内に、Musical.lyはTikTokと呼ばれる別のアプリと合併されました。このアプリは、それ以来(月に3Mの米国iOSのインストール数を記録しています)、ずっとトップを走り続けており、本当の意味でパワーを持っているように見えます。Bytedanceはプライベート市場で78Bドルと評価されています。

教訓

私たちは、アウトサイダーに投資することをビジネスとしています。

時に、前例企業との比較に意識を傾けすぎることで、予測しやすい分析に集中してしまい、その成長可能性を見失ってしまいます。

アウトサイダーは本来、比較対象とされる誰とも同じようなパフォーマンスを発揮するはずがないのにも関わらず。


翻訳・編集 西島伊佐武