【イークラウド株式会社】株式投資型クラウドファンディングでベンチャー投資を身近に!

2020.08.31

イークラウド株式会社

代表取締役 波多江 直彦氏

慶應義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。広告代理部門、スマホメディア、オークション事業立ち上げ、子会社役員等を経て、サイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事。その後XTech Venturesにてパートナーとして、VR・SaaS・モビリティ・HRTech・シェアリングエコノミー・サブスクリプションサービス等への投資実行を担当。2018年7月にイークラウド株式会社を創業、代表取締役に就任。

 

新しい産業で活躍したい

ー起業に至るまでのバックグラウンドを教えてください。

大学を卒業した2006年に、いつかインターネット関連の事業をやりたいと思ってサイバーエージェントに入社をしました。

すでに成熟した産業で頑張るよりも、新しい産業で自由にやりたいという思いがあり、若い人が活躍している会社としてサイバーエージェントを選びました。

入社後、インターネット広告代理部門で5年間マーケティングに携わり、スマホが普及し始めたタイミングで、自ら志願してパシャオクというオークション事業の子会社を立ち上げました。

しかし、世の中的にはオークションではなくフリマが流行る結果となり、最終的には撤退という形になってしましました。

10億弱の損失を計上してしまい、これを取り返そうと思って、その後はサイバーエージェントのベンチャーキャピタルで投資を始めました。

その後、XTech Venturesに移り、パートナーとして2年程活動し、イークラウドを創業しました。

 

株式投資型クラウドファンディングで日本の成長資金を増やす

ーイークラウド創業の経緯を教えてください。

日本のベンチャー投資の年間総額は、VCやCVCの増加に伴って上昇傾向にあり、およそ4000億円です。僕もこの中で5年間VCをやってきました。

一方で、アメリカの年間ベンチャー投資は日本の37倍もあり、日本の成長資金は世界的に見ると圧倒的に足りていません。この差を埋めていくためには、VCやCVCだけが頑張るのではなく、より大きなモメンタムをこのマーケットに持ってくる必要があります。

その新しいモメンタムの1つとして、現在イークラウドがやっている株式投資型クラウドファンディング事業があります。この株式投資型クラウドファンディングを広めることで市場に流れ込む成長資金を加速したいと考え、このマーケットを開拓しようと決めました。

日本にある1800兆円という個人金融資産の一部をベンチャー投資に回し、チャレンジャーを応援するという土壌を日本で築くことができれば、ものすごく大きなカルチャーになりますし、次世代の会社のための推進力になると考えてこの事業をやっています。

ー事業についても詳しく教えてください。

イークラウドというベンチャー企業と個人の投資家をマッチングするプラットフォームで、株式投資型クラウドファンディングをやっています。

株式投資型クラウドファンディングでは、ベンチャー企業は1年間で1億円までの資金調達、個人の投資家は1社に対して1年間に50万円までの出資をすることができます。

ベンチャーにとっては、今までアクセスすることができなかった個人投資家から出資してもらうことが出来るようになるメリットがあります。

また、個人投資家にとっても、従来は門戸が閉ざされていたベンチャー投資への貴重な機会になると思います。

イークラウドでは7月末に1号案件をリリースし、地元カンパニーという長野県にある上場を目指している会社の資金調達を行っています。現時点(8/19)だと、目標額3000万円に対して、およそ3800万円が集まってきています。(※追記※ 取材後に上限の5000万円もの資金が集まりました。)

今回の1号案件ではたくさんの個人の投資家や応援者の方々に興味を持って頂き、250人以上の方々に応募頂くことが出来ました。

こういった投資機会を個人の方々にさらにご提供し、新しい資金調達手段を世の中にどんどん広めていきたいと思っています。

個人投資家にとって馴染みのないベンチャー企業にも興味を持って頂くため、経営者の人柄がわかるような動画を載せていたり、魅力や成長可能性について明記し、金融商品としてのリスクもわかりやすく解説しています。

また、イギリスではすでに株式投資型クラウドファンディングの市場がすごく大きくなっていて、年間約500億円が個人の投資家がベンチャーに対して出資する市場感になっています。

その中でもユニコーン企業も生まれており、非常に大きなベンチャーが成長する一つのエンジンになっております。日本でもこのように市場を大きくできればと思っています。

 

ベンチャーの株主が200人以上に増えても大丈夫?

株式投資型クラウドファンディングの課題として特にVCの方々が気にされるのは、株主数が増えるという特性です。

株主が増えることで考えられる3つの課題があります。

まずは、反市場的、反社会的な勢力が株主になってしまい、M&AやIPOの際に支障になる恐れがあることです。

イークラウドでは、出資いただいている大和証券グループの力を借りて、そういった方々が株主にならないように属性確認を行っています。

2つ目が、株主全員と株主間契約を締結する際に、200人がハンコでスタンプラリーしなければならないとなると、非常に煩雑な手続きとなることです。

イークラウドは全株主と株主間契約をオンライン上で締結できる電子契約の仕組みを提供していて、その契約負荷を下げています。

3つ目が会社運営上、株主総会などの際に、まだ少数のベンチャーに200人もの株主が来るとなると、事務的な作業が膨大になる可能性があることです。

昨今は、オンラインの株主総会に関する機運も高まっていますが、僕らはもともと少人数の若いベンチャーに多くの株主が入るという構造を想定していましたので、株主総会もオンラインで完結する仕組みを提供し、簡単な操作で全株主に対して株主総会の招集通知や議決権行使などを行えるようにしています。株主もオンラインでその議案に対して賛成反対を投じることができ、集計も自動で行われます。

このように、大手証券会社やITの力を借りて、株主が多くなってもベンチャー企業の負担を少なく対応できる仕組みを提供しています。

 

多数の株主がベンチャー企業を応援する

ー株式投資型クラウドファンディング事業を持続的に進めていくためには選定した企業の長期的な業績が非常に大切になってくると思います。一方で、資金調達成功時に手数料がイークラウドに入るビジネスモデルであるため、一定の案件数が必要になってくると思います。そこの部分のバランスはどのように考えていますか?

僕らはHPでも表記しているように、”プロが厳選したベンチャー企業”というポジショニングを取っています。

ビジネスモデル的には、確かに案件を多く並べてとにかく資金調達を成功させることで短期的には売上が上がる構図にはなっています。

しかし、個人投資家の方々にきちんとリターンが入っていく構造を中長期でつくっていかないと、持続的でなくなってしまいます。

だからこそ案件を選定するときもプロが選んだ案件と本当に自信をもって言えるように社内でも厳しくチェックをしています。

ーVCとして出資する企業を選ぶのと同じような考えですか?

それが一番理想だと思っています。

また、僕らの特性としてはプロのVCのようなハンズオンではなく、出資された投資家の人たちによる後押しや応援などが経営者の力になると信じています。

イギリスの有名な株式投資型クラウドファンディングの成功事例としてBrewDogというクラフトビール製造会社がありますが、そこでは個人の投資家たちと企業の間で素晴らしい関係性が構築されています。

BrewDogの株主は11万人を超えていて、非上場で時価総額約2000億円の会社になっていますが、新しい商品を出すときに投資家たちが口コミを広めてくれたり、飲食店の出店エリアを考えているときに各地に住んでいる株主に相談するなどしています。

こういったコミュニティはVCにはできない支援のスタイルになると思ってますし、株式投資型クラウドファンディングならではの成長ストーリーをつくっていくことが非常に重要だと思っています。

 

今後はより多様な選択肢を

ーIPOやM&Aというエグジットだけでなく配当による利益分配モデルも考えていますか?

株式型の一番のメリットで大きなリターンは、IPOやM&Aによるエグジットなので、IPOやM&Aに向かって成長を目指す会社をまずは扱っていきます。

一方で配当や優待、買い戻しによる株主還元のスタイルも認めていこうと考えています。例えばサッカークラブだとファンに年間パスやファン感謝祭などのイベントに参加できる優待を渡すことが出来るので相性が良いと思っています。

また酒蔵などでは、「配当として1本1万円の大吟醸を10年間送ることを約束して10万円の出資を募る」といったこともできるかもしれません。

1回の売買で終わってしまう購入型クラウドファンディングと比較して、株式投資型クラウドファンディングは中長期での応援になります。配当や優待等で投資家が納得するのであれば、そういった可能性も考えていきたいです。

ー一度購入した株式はIPOやM&Aでエグジットするまでは保有し続ける形になりますか?

IPOやM&Aがわかりやすい事例ですが、そうでないエグジットの形も用意していきたいと関係者間でも話をしていて、セカンダリーマーケットなどのシナリオも考えています。

大切なのは需要と供給の関係なので、売りたい人と買いたい人がいればマーケットが成立しますが、今はまだニーズが少ない状況です。

一方で、VCやCVCが伸びてきて、セカンダリーマーケットのニーズも大きくなってきているので、その話も現実的になってくるかもしれません。

 

日本人全員をエンジェル投資家に

ー日本の1800兆円の個人資産の一部を投資に回すことを目標に掲げています。一方で、日本人の金融リテラシー面での課題や現金保有の多さも話題になっていますが、そこについて、どのようにお考えですか?

1号案件として調達を支援した「地元カンパニー」では、一般の投資家も含め、親族や友達、隣町の町長など様々な人たちに応援してもらう構造を作ることができました。会社の拠点が長野ということもあって長野の人たちもたくさん投資をしてくれています

身近でないベンチャー企業に対しての投資は気が引けるかもしれませんが、「近所のすごい優秀だった人が事業を起こすので、応援の気持ちで10万円くらい投資してみる」といった行動は起こせると思っています。

日本中でチャレンジャーが増えれば、その周りの人たちがイークラウドを通じて彼らに投資することも増え、そのサイクルを広めていくことが可能だと思ってます。

例えば暗号資産のように周りでベンチャー投資をしている人が増え、「あそこ、面白そうだよ」とか「あのベンチャーの株価が10倍になったらしい」といった会話が身近になり、先ほどのBrewDogのような成功事例が出てくると市場が一気に伸びていくポテンシャルがあると考えています。

一方で国も、エンジェル税制というベンチャー投資をした個人の税金を控除する制度をつくるなど、ベンチャー投資について後押しをしてくれています。

これまではエンジェル税制の手続きが煩雑で利用が限定的でしたが、イークラウドはエンジェル税制の認定事業者として経済産業省に認定していただくことが出来たので、イークラウドを通じて投資をされた方はより控除を受けやすくなります。

資産が多くて節税に興味がある医者や弁護士といった方々にも、今後さらに利用して頂けるようになると考えています。

ーイークラウドの資金調達についても教えてください。2018年に、大和証券グループの子会社から4億円とシードラウンドとしては比較的大きな資金調達をしています。

まず、金融業の登録が非常に大変ということがあります。最短でも1年程度はかかると考えていましたが、実際にはその倍の2年もかかりました。

登録をする上で金融業経験者が何名以上必要といった細かいルールがたくさんあるので、ある程度まとまった資金が必要でした。なので、シードラウンドというよりは、3回くらいのラウンドをまとめて行ったという感じです。

国内トップクラスの証券会社である大和証券にその事情を理解していただき、まだ形になっていなかった段階で大きな出資をしてもらえたことには非常に感謝しています。

 

フィンテックならではのハードシングス

ー事業を進める中でハードシングスはありましたか?

まず、僕の人生のハードシングスは2年前無職だったことです。

そこから色々とチャレンジをしてイークラウドを創業し、金融業のライセンスを取って、サービスリリース、1号案件の資金調達を成功させるところまで来るのは大変でした。

事業のハードシングスでいうと準備期間に2年を費やしたことです。その間は、システムが完成していて起業家から案件が来ていても、何も身動きが取れないんです。

10名以上の社員を雇用していますので給与は払い続けなければいけませんし、金融出身の社員が多いので給与は安くありません。そんな中で、金融庁管轄の関東財務局に登録を認めてもらったり、日本証券業協会に加入を認めてもらうなど、とにかく粛々と準備を進めてきた2年間でした。

当初は1年でローンチできると思っていたので、準備期間が長引いたことに不満を持つ人や辞めていく人たちもいました。そういった苦労をしながらも、一生懸命働いてくれる社員たちのおかげで何とかローンチまで来ることが出来ました。

ー非常に苦労して今回の1号案件に至ったのですね。これからの展望やビジョンについてはどう考得ていますか?

日本の個人資産をベンチャー投資に回すことが日本のためになると信じているので、そこを目指してやり切りたいと思っています。

一般の投資家だけでなく、たくさんの人たちが投資を通じて起業家を応援することが出来る時代がくると思います。全員がエンジェル投資家になって、ベンチャーを応援して、成功事例も増えて、世の中に新しいサービスがたくさん出てくる時代を創りたいです。

イークラウドを共同創業した西條 晋一氏(左)と波多江 直彦氏(右)

ーコロナの影響についてどう考えていますか?

最近のリサーチでは47%ものベンチャー投資資金が減少したと出ていて、新しいことやりたいけど資金調達できない人も増えていると思います。

新たな投資家を市場に連れてきてベンチャーを盛り上げることができれば、このタイミングでもエコシステムをより大きくすることができると思っています。

世の中に対して、業界に対して、そういった貢献をしていきたいと考えています。

ーコロナ禍でクラウドファンディング事業が非常に注目されています。

この時代の中でも、頑張ってる人たちを応援したいという方々がいることが表層化したのだと思います。イークラウドとしてもこれを追い風にしていきたいです。

ーLaunch Padにも応募して頂きましたが、IVSに参加した感想を最後に教えてください。

今回Launch Padに登壇することはできませんでしたが、予選を通じてもっと準備や努力が必要だったと反省しています。素晴らしいベンチャーがたくさんいる中で、きちんと準備をしないとそう簡単にLaunch Pad優勝までは上り詰めることが出来ないと感じました。

また、当日はオンライン開催でしたが、普段から参加されている皆様に新たな顔ぶれも交えながら、たくさんの人を巻き込んでいて、運営の方もすごく大変だっただろうと思いましたし、素晴らしかったとも思いました。

 

ーありがとうございました!

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【コメント】:イークラウドではシード・アーリーの起業家の壁打ちを歓迎しているので、少しでも興味のある方は波多江のTwitter( @nhatae )から是非ご連絡を!


取材・編集 : 西島伊佐武